本研究では、まずエコロジカル・バイアスが発生するメカニズムについて最近の理論的成果のレビューを行った。その結果、エコロジカル・バイアスは、コホート研究やケース・コントロール研究でのバイアスのアナロジーとして考えられない特殊なバイアスである。これはエコロジカル研究での交絡や効果の修飾の考え方が、コホート研究やケース・コントロール研究でのそれと概念的に異なるからである。したがって、コホート研究、ケース・コントロール研究と同じ様な方法を用いても、エコロジカル・バイアスを除去することはできない。などのことが判明した。 引き続いて、エコロジカル研究と対比させるために、個人レベルの研究であるコホート研究、ケース・コントロール研究において交絡と効果の修飾はどのように考え、どのように対処すべきものであるかについて、特に因果推論の観点と標準化を中心にまとめを行い、研究成果として発表した。これにより、個人レベルの研究とエコロジカル研究の相違点を明確にすることができた。 因果推論の考え方とそれに付随した標準化の方法を拡張することで、エコロジカル・バイアスに対処するための方法論を開発することが可能だと考えられた。
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