山形県長井市において、平成5年8月から12月にかけて、自記式の抑うつ性尺度であるGeriatric Depression Scale(GDS)をスクリーニング法として用いた65歳以上の高齢者の精神保健調査を行った。一次調査票は、GDSのほか、受療行動、日常生活動作、ぼけ関連症状等についての質問から構成されており、2056名の一般住民の配布し回収した。二次調査は、一次調査の有効回答者から、GDS6点以上の者319名全員と5点以下の者から無作為に抽出した150名に、精神科医による訪問調査を行った。訪問調査では、気分障害の診断のために構造化面接法であるStrucures Clincal Interview for DSM-III-R(SCID)を施行した。調査の結果、以下のような結果を得た。 GDSの得点の分布は、最頻値が1点で低い得点に偏っており高得点の方向にすそ野をひく分布形を示した。 GDS6点以上の高得点群と5点以下の低得点群で、一次調査の結果の比較を行った。その結果、GDS高得点群の比率は、女性の方が高く、高年齢になるほど高くなる傾向が認められた。また、GDS高得点群では、現在職業についていない者が多く、自分の健康度を低く評価する者が多く、日常生活動作や移動能力が低下している者が多く、ぼけ関連症状の出現率も高かった。 二次調査の結果、GDSの得点が6点以上の者で調査に応じた者206名から38名のうつ状態の者が把握された。その多くは、死別の自分の身体的な病気に対する反応性のうつ状態と判断された。大うつ病は4名、気分変調症は2名のみであった。また、5点以下の者のうち調査に応じた117名からも5名(うち大うつ病1名)のうつ状態の者が把握された。対象者におけるうつ状態の有病率は7.6%、大うつ病の有病率は0.9%程度であると推測された。
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