本研究では、高知県十和村の65歳以上在宅高齢者を対象として、健康状態の主観的側面(自覚的健康状態)と客観的側面(健康診査検査所見)に関連する生活様式(保健習慣と社会的ネットワーク)を検討した。自覚的健康状態と生活様式の把握のために、同村の65歳以上在宅高齢者全員934名を対象として留置質問紙調査を実施し、874名から回答を得た。健康診査検査所見として、老人保健法による基本健康診査の検査結果を利用し、質問紙調査回答者のうち385名の検査結果を得た。まず、質問紙調査により把握した自覚的健康状態と生活様式との関連を検討した。性別に、65-74歳の前期高齢期と75歳以上の後期高齢期に分けて解析した。保健習慣に関する項目では、「便通規則的」と「夜間排尿まれ」がすべての性、年齢階級で、「身体活動活発」が男の両年齢階級と女の後期高齢期で「よい自覚的健康」に関連していた。しかし、喫煙習慣は関連せず、飲酒習慣では、男の前期高齢期で「非飲酒」が「よい自覚的健康」に関連したにとどまった。社会的ネットワークに関する項目では家族とのネットワーク(婚姻状態、同居家族、別居子との交流)と、地域社会でのネットワーク(親族との交流、近隣との交流、友人との交流グループ活動参加)を検討した。家族とのネットワークでは、「別居子との交流頻繁」が女の前期高齢期で「よい自覚的健康」に関連するにとどまった。これに対して地域とのネットワークでは、近隣との交流以外の項目が関連しており、頻繁な交流がよい自覚的健康に関連することが、男では両年齢階級で、女では前期高齢期で見られた。男では年齢階級にかかわらず、女では前期高齢期に、特に地域社会でのネットワークの多寡が自覚的健康状態に関連することが示唆された。今後、健康診査検査所見と生活様式との関連についても検討を加え、自覚的健康状態と生活様式との関連の状況との比較を進める。
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