和歌山県美山村(人口2639人)において1988年に設定した1543人のコホート集団の40-59歳の女性389人(40歳代135人、50歳代254人)より、住民台帳を用いて無作為に40歳代、50歳代各50人ずつ計100人を選出した。また和歌山県太地町(人工4098人)においても40歳代女性324人、50歳代女性338人から同様に住民台帳により40歳代、50歳代各50人ずつ計100人を選び、合わせて200人を対象とした。本対象について質問票調査より、月経の有無、閉経年齢について把握した後Dual energy X-ray absorptiometryを用いて、腰椎を大腿骨近位部の骨密度を測定した。その後採尿、採血を行い尿中ピリジノリン(Pyr)、デオキシピリジノリン(D-Pyr)、血中オステオカルシン(BGP)の測定を行った。Pyr、D-PyrはHPLC蛍光法で、BGPはIRMA法で測定した。 美山村における40歳代、50歳代女性の腰椎L2-4の骨密度の平均値(標準偏差)は40歳代から順に、1.18(0.16)、0.99(0.18)mg/cm^2であり、大腿骨頚部の骨密度は0.88(0.11)、0.75(0.11)mg/cm^2であった。尿中Pyr値は順に31.17(7.12)、41.42(11.10)pmol/mumol・Cre、D-Pyr値は5.13(1.49)、7.33(2.65)pmol/mumol・Cre、血清BGP値は6.79(3.30)、12.16(5.72)ng/mlであった。次に骨密度に与える閉経の影響を明らかにするため、年齢をマッチングさせ閉経前の女性10名と閉経後の女性10名(47-55歳)を選び、両群で骨密度を比較すると腰椎L2-4で閉経前0.83(0.14)、閉経後0.71(0.04)g/cm^2、大腿骨頚部で閉経前0.75(0.18)、0.59(0.07)g/cm^2となり、閉経前の群の方が有意に骨密度が高かった。以上より50歳代女性は40歳代に比して骨密度は有意に低く、骨代謝マーカー値は有意に高いことがわかった。これはこの年代間で骨密度の低下と骨代謝回転の亢進がおこっていることを示唆するものである。また閉経は骨密度の低下に影響を与える重要な因子であることが示された。太地町女性の調査でも同様の傾向が得られた。
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