結核菌の主要分泌蛋白であり、T細胞およびB細胞により強く認識されることが確認されているalpha抗原および結核菌の細胞壁上の主要なリポ蛋白でやはりT細胞およびB細胞により強く認識されることが確認されている19kDa蛋白質の結核菌固有の領域をリコンビナントキメラとして大腸菌中で発現させてこれを精製し抗原として用いて結核感染の迅速かつ特異的な血清診断法をを確立するために以下の要領で研究を進めてきた。 マルトース結合性蛋白質(MBP)と結核菌alpha抗原および19kDaリポ蛋白質との融合蛋白質の大腸菌での発現と精製:alpha抗原では、PCRで増幅したDNAのうちカルボキシ末端の約60塩基対のみ含むものを、19kDaリポ蛋白質ではアミノ末端付近の約60塩基対のみ含むものをMBPとの融合蛋白質発現用ベクターpMALcに連結し、組み替えプラスミドを構築した。このプラスミドで大腸菌を形質転換し、得られた形質転換体よりDNAを抽出、挿入断片の有無を確認した。目的のDNA断片の存在が確認された大腸菌にインデユーサーであるIPTG添加後2時間培養したところ、菌体蛋白の20%ものリコンビナントが発現していることを確認した。培養した大腸菌より蛋白質を抽出し、リコンビナント蛋白質のみをアミロースレジンカラムに吸着させ、マルトースを含むバッファーで溶出し、90%以上の純度のリコンビナント蛋白を精製した。得られたリコンビナント蛋白が結核患者血清との反応性を保持しているかどうかELISA法で検討した結果、alpha抗原リコンビナント、19kDaリポ蛋白質リコンビナントともに患者血清のみが反応した。この結果は、リコンビナントalpha抗原および19kDaリポ蛋白質が結核迅速診断法へ応用できる可能性を示したものである。
|