Rh血液型抗原ポリペプチドの構造とその多様性を探るため、抗原に対応する各ポリペプチドに特異的な内部アミノ酸配列を明らかにし、その情報を基に対応するcDNAをPCR法で増幅してその全塩基配列を明らかにすることを試みた。そこで、まずCcDEe型の表現型を持つ赤血球膜を調製し、既存の抗RhDまたはRhC抗体を用いた免疫沈降法で抗原の分離を行った。しかし、膜上でのRhDおよびRhCポリペプチドの存在量が少なく、また、これらのポリペプチドは、使用した界面活性剤であるTriton X-100に不溶性の細胞骨格成分と結合しているため、内部アミノ酸配列を決定するのに必要な量を確保できなかった。加えて、これらの抗体は抗原への結合に関して高次構造にも依存しているため、可溶化したポリペプチドの同定に使用できないという欠点がある。以上の問題点を解消するためには新たなRhポリペプチド抗体が必要であった。そこで、Rhポリペプチドに共通であろうと考えられている領域についてペプチドを合成し、その抗体を作製した。この抗体は、予想されたようにRhの表現型の違いにかかわりなくすべてのヒト赤血球に結合し、その活性は抗原の高次構造には依存せず、ウェスタンブロッティング後の抗原に対しても使用可能であった。現在、抗原ポリペプチドをこの抗体および一次、二次元電気泳動法を用いて分離し同定し、その多様性を調べている。これと同時に行ったcDNAライブラリーの作製については、Wadaらにより報告された赤血球前駆細胞の二段階液体培養法によるRh抗原のin vitro発現系はその条件設定が難しく、結局は網状赤血球mRNAから合成したcDNAをテンプレートとし、Rh抗原ポリペプチドに共通であろうと予想されている部位に対し作製したプライマーセットを用いたPCR法により作製した。このライブラリーは、サイズの異なるいくつかのcDNAを含んでいる。
|