研究概要 |
補体B因子の活性化の結果生じる分解産物Bbは、近年リンパ球の増殖作用などのインターロイキン様作用を有することがin vitroの系で報告され、注目を浴びている。更に自己免疫疾患患者の血清中のBbが高値であることを考え併せると、Bbが生体の免疫機構の調節に重要な働きを果たしていることが推測される。本研究の目的は、Bbのin vivoの生体における免疫機構への働きを、トランスジェニックマウスの系で明らかにすることである。本年度は、Bbをトランスジーンするための材料となる完全長のB因子cDNAの単離と、このcDNAに変異を導入することによってBbをコードするcDNAを作成することについて実験を行なった。 まず、部分長のBcDNAをプローブとして、ヒト肝臓lambdagt11cDNAライブラリーより、全長が2385 塩基対(bp)よりなる完全長のB因子cDNA(BHL4-1)を単離し、塩基配列を決定した。BHL4-1は、40bpの5′非翻訳領域(UTR),2292bpから成る762個のアミノ酸をコードする領域,53bpのポリAシグナルを含む3′-UTRを含んでいた。発現ベクターp91023(B)のEcoRIクローニング部位に挿入し、COS細胞で発現させたところ、分子量約100kDaの正常血清中のB因子と同様の分子量を有する組みかえB(rB)を得た。溶血活性も正常B因子と同様にみとめることより、rBは正常B因子と同じタンパクであることが判った(文献参照)。更に私共はpelymerase chain reaction(PCR)法を応用したoverlap extension法により、BHL4-1からBa部分(702bp)のみを欠失したmutant B cDNAを作成した。このcDNAはleader peptideとBbをコードする領域が直接結合する構造をもつ。このmutant Bb cDNAを発現ベクターp91023(B)に組みこみ、COS細胞に導入することにより、ヒトBbと同じ分子量約70kDaを有する組みかえBb(rBb)の発現に成功した。このBbをコードするcDNAをもとに、トランスジーンを行ない、in vivoでのBbの生体に及ぼす作用を検討して行く予定である。
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