研究概要 |
bcl-2遺伝子をネオマイシン耐性遺伝子を含むベクターに組み込み、ヒト小細胞肺癌細胞株SBC-3にリポフェクション法により遺伝子移入し、ネオマイシンによるセレクションによりSBC-3/Bcl-2を得た。SBC-3/Bcl-2細胞の各種抗癌剤に対する感受性の変化をMTT法により検討したところ、親株であるSBC-3細胞をcisplatin、etoposide、ACNU、adriamycin、methotrxate、CPT-11、taxol、mitomycin C に接触させることにより、アポトーシスの指標であるDNAのフラグメンテーションが観察された。 SBC-3/Bcl-2はこのうちのadriamycin、CPT-11、mitomycin Cに対しSBC-3細胞と比較してそれぞれ3.4、7.6、5.7倍の耐性を示した。その他の薬剤に対しては耐性を示さなかった。さらにトランスフェクタントが耐性を獲得した薬剤において親株でDNAフラグメンテーションが認められる濃度の薬剤ではSBC-3/Bcl-2ではDNAフラグメンテーションが認められなかった。以上により、(1)ある種の抗癌剤の抗腫瘍活性にアポトーシスが関与していること(2)bcl-2遺伝子がアポトーシスを抑制することにより細胞の抗癌剤感受性を低下させ得ること(3)抗癌剤が関与するアポトーシスにはbcl-2遺伝子により抑制される経路と抑制されない経路があることが示された。 抗癌剤の作用機転とのアポトーシスとの関わりについては、耐性を示すadriamycin、CPT-11、mitomycin C がそれぞれトポイソメラーゼII阻害、トポイソメラーゼII阻害、DNAのアルキル化であり、DNA障害能をもつ以外は共通性が見い出せず、今後の作用機序の検討が必要と考えられた。 アポトーシスに関与すると考えられる因子に働く薬剤のSBC-3/Bcl-2に対する感受性の変化のスクリーニングではProtein kinase A,C阻害剤、刺激剤、superoxide産生剤、cdc2キナーゼ阻害剤等を検討したが、明確な感受性の変化は認められなかった。
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