慢性肝疾患において末梢血リンパ球のインターロイキン-2レセプターbeta鎖(IL-2Rbeta鎖)の発現が低下し、その原因がNK細胞にあることを明らかにしてきた。上記事象の成因として1)末梢より肝組織へのIL-2Rbeta鎖陽性細胞の移動による、2)肝におけるIL-2Rbeta鎖発現抑制の機構の存在のため、の2つの可能性が考えられる。本研究は肝におけるIL-2Rbeta鎖の発現を目的とした。(方法)慢性肝炎、肝硬変、肝細胞癌患者の肝生検、剖検で得られた肝組織を用いた。肝組織を細切後、Percoll密度勾配遠心法で、large granular lymphocyte(NK細胞)、クッパー細胞を分離。抗ヒトIL-2Rbeta鎖抗体(Mikbeta1)を用いて染色後、フローサイトメトリーで解析。Human IL-2Rbeta probeを用い、mRNAを抽出。slot hybridizationにて解析。Periodate-lysine-2% paraformaldehyde (PLP)固定凍結切片を作製しMikbeta1を用いて免疫組織染色で検討した。(成績)フローサイトメトリーではクッパー細胞にIL-2Rbeta鎖の発現は認めなかった。得られた肝組織からは計測に必要な数のNK細胞は分離されなかった。mRNAレベルにおいても肝組織においてIL-2Rbeta鎖の発現はみられないことが確認された。免疫組織染色においても肝組織にIL-2Rbeta鎖陽性細胞はみられなかった。以上より、末梢血のNK細胞におけるIL-2Rbeta鎖の発現低下は、肝臓への移動のためではないことが証明された。従って、慢性肝疾患の肝臓では、IL-2Rbeta鎖の発現を低下させる機構が存在することが推察された。現在、ニトロソアミンによる肝障害及び肝癌マウスを作製し、肝障害及び発癌時の肝臓におけるIL-2Rbeta鎖の低下機序について検索中である。
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