研究概要 |
固形腫瘍組織の発育増殖には栄養血管の構築が必須であり,特に肝細胞癌では顕著な毛細血管網の新生を来たし,これには肝細胞癌由来の血管誘導物質が重要であると考えられるが,その詳細は明らかにされていない。本研究では培養ヒト肝細胞癌株であるHUH-6,HUH-7,PLC/PRF/5,HLE,HLF,およびHepG2のcell extractを用いて,牛副腎由来毛細血管内皮細胞(BCEC)の増殖を刺激する活性の有無を,トリチウムチミジンの取り込みでを検討した。その結果,特にHLEのcell extract中にBCECの増殖を対照の約5倍刺激する活性が存在することが明らかとなった。また、このHLE細胞由来のBCEC増殖刺激活性は,80℃,10分間の加熱処理により失活し,蛋白質である可能性が考えられた。この活性はheparin-Sepharose beadsに吸着されず,heparin非結合性であると考えられる。また,HLEのcell extract中には線維芽細胞の増殖を誘導する活性も含まれており,血管内皮細胞増殖活性のさらなる精製,分析が必要であると考えられる。現在すでに入手可能となっている血管新生因子の中和抗体による中和試験ならびに,家兎眼球結膜を用いてin vivoにおける血管新生作用の有無につき検討中である。今後,HPLCなどで本生理活性物質の精製,分析を予定している。
|