1.長鎖脂肪酸として飽和脂肪酸のパルミチン酸、不飽和脂肪酸のオレイン酸、アラキドン酸いずれの十二指腸内への投与においても、腸管リンパ液中の中性脂肪濃度の増加とともに輸送リンパ球数、PHA刺激下のリンパ球幼若化反応も増大したが、オレイン酸の投与で増加は著明で、アラキドン酸では軽度であった。オレイン酸投与前後での腸間リンパ球サブセットに有意な変化を認めなかったが、W3/13(pan T)、W3/25(helper T)、OX39(IL2-R)は増加傾向を、OX8(non helper T)、OX6(Ia)は低下傾向を認めた。一方、中鎖脂肪酸のオクタノイン酸の投与により腸管リンパ液中の中性脂肪濃度は軽度に増加したが、輸送リンパ球数、リンパ球幼若化反応に有意な変化を認めなかった。 2.パイエル板のリンパ球を蛍光物質であるアクリジンオレンジで標識後、腸管膜リンパ管中の標識リンパ球の割合は、オレイン酸投与前後で有意な変化を認めなかった。 3.Pluronic L-81を長鎖脂肪酸に添加後投与すると、飽和脂肪酸のパルミチン酸、不飽和脂肪酸のオレイン酸ともに腸管リンパ液中の中性脂肪濃度、輸送リンパ球数、PHA刺激下のリンパ球幼若化反応の増加がいずれも有意に抑制された。 これらより腸上皮細胞内でのカイロミクロンの合成転送過程が腸管リンパのリンパ球輸送を増大し、リンパ球機能にも影響をおよぼすことが明らかとなった。また、長鎖脂肪酸投与による腸管リンパのリンパ球輸送の増大の由来は、多くはパイエル板の傍濾胞域のリンパ球であるが、粘膜固有層内のリンパ球の流れ込みも増大していると考えられた。以上の成績から長鎖脂肪酸の吸収転送過程が消化管リンパ装置(GALT)における免疫防御機構に重要な役割を果たすことが示唆された。
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