研究概要 |
1.肝細胞癌組織と正常肝組織におけるインテグリンalpha1、alpha2、alpha3、alpha4、alpha5、alpha6、beta1の局在を抗インテグリンalpha1、alpha2、alpha3、alpha4、alpha5、alpha6、beta1に対する抗体を用いて免疫組織化学にて、光顕、電顕的に検討した。その結果正常肝に比べ、肝細胞癌においてインテグリンalpha2、alpha3、alpha6の局在が血洞および肝癌細胞間で増強していた。これらの結果から、肝細胞癌組織において、これらラミニン結合性のインテグリンの増強は基底膜の形成や肝癌細胞の転移に関係しているものと考えられた。 2.肝癌細胞のラミニンへの接着におけるインテグリンalpha6/beta1の関与を検討するため、3腫類の肝癌細胞株に対し、インテグリンalpha6,beta1に対する抗体を濃度別に加えた後、クロム酸ナトリウムで肝癌細胞をラベルし、肝癌細胞のラミニンへの接着が抗インテグリンalpha6,beta1抗体でどの程度抑制されるかを検討した。その結果、肝癌細胞のラミニンへの接着は抗インテグリンalpha6,beta1抗体の濃度依存性に抑制され、特に抗インテグリンalpha6抗体は最高50%以上細胞接着を抑制した。このことから肝癌細胞のラミニンへの接着にはインテグリンalpha6/beta1が重要な役割を果たしているものと考えられた。 インテグリンalpha6/beta1の肝癌細胞転移への関与を検討するため、抗インテグリンalpha6,beta1抗体を肝癌細胞に加えた後ヌードマウスの尾静脈より注入したが、抗体を加えた群、加えない群ともに5週間後に開腹したが転移巣の形成は認められなかった。今後ほかの肝癌細胞株を用いて検討する予定である。 4.肝癌細胞におけるインテグリンalpha1、alpha2、alpha3、alpha4、alpha5、alpha6、beta1の表出が、浮遊状態と細胞外基質への接着時でどのように変化するかをインテグリンalpha1、alpha2、alpha3、alpha4、alpha5、alpha6、beta1抗体を肝癌細胞に加えた後、フローサイトメーターにて比較したが現在まで有意な結果は得られていない。
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