1.気胸後片側肺水腫の発生機序のひとつである肺微小血管透過性亢進に好中球が関与すると報告されている。活性化好中球による血管内皮傷害を抑制するとされるペントキシフィリン(PTXF)を投与して家兎の気胸後再膨張肺の微小血管透過性亢進に及ぼす効果を検討した。[方法]家兎に右気胸を作製し5日間維持した。-10cmH_2Oので2時間の持続吸引を行い虚脱肺を再膨張させた。PTXFを再膨張直前に20mg/kg静注、持続吸引中に6mg/kg/hrの持続静注を行った。静脈内に投与した^<125>I-アルブミンの肺組織血漿計数比(T/P)により肺微小血管透過性を評価した。[結果]PTXFを投与しなかった家兎(n=9)の右肺のT/P(0.14±0.07;mean±SD)は左肺(0.09±0.04)に較べて高値(p<0.05)であった。PTXFを投与した家兎(n=6)の右肺のT/P(0.32±0.07)は左肺(0.09±0.04)に較べて高値(p<0.05)であった。[結論]PTXFは気胸後再膨張に伴う肺微小血管透過性の亢進を抑制しなかった。気胸後片側肺水腫の発生機序に活性化好中球以外の要素が存在する可能性が示唆された。 2.虚脱肺ではサーファクタントが枯渇する。そこで気胸後再膨張肺における血管透過性亢進に対する人工サーファクタント気道内注入の効果を検討した。[方法]虚脱肺の再膨張30分前に人工サーファクタント5mgを虚脱肺の気道内に注入した。T/Pにより肺微小血管透過性を評価した。[結果]人工サーファクタント非投与家兎(n=6)の虚脱後再膨張肺のT/P(0.34±0.17;mean±SD)は左肺(0.15±0.06)に較べて高値(p<0.05)であった。人工サーファクタント投与家兎(n=6)のT/Pは右肺(0.31±0.15)と左肺(0.29±0.13)で差を認めなかった。[結論]人工サーファクタントの気道内注入は気胸後再膨張に伴う肺微小血管透過性の亢進を制御した。気胸後片側肺水腫の発生機序にサーファクタントの枯渇が関与する可能性が示唆された。
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