研究概要 |
気道分泌蛋白の粘性を司るムチンは、分子量10^7ダルトンと巨大であり、その分子量のうち70%を糖鎖が占めるため、コア蛋白の構造はこれまで明らかにされていなかった。しかし1989年頃よりMUC1を始めとしてヒトの各組織からムチン遺伝子がクローニングされ、我々も腸管からクローニングされたMUC2がヒトおよびラットの気管支で発現していることを明らかにした。またSO_2を曝露したラットのcDNAライブラリーによりMUC2をプローブとし、7つのクローンを得、そのうちRAM7Sはムチン遺伝子に特有のスレオニンを中心とした繰り返し構造を持っていた。RAM7Sは、SPFラットでは発現しておらず、SO_2を曝露+センダイウィルス感染ラットでムチンに特有のPolydisperse signalを認めた。SO_2のみ、センダイウィルス感染のみのラット気道では発現を認めなかった。ラットでの気道ムチン遺伝子のクローニングは、動物発癌モデルでの転移に関する研究に有用であると考える。 肺癌臨床例の検討では、これまでに当院第2外科で摘出した肺癌症例のうち、術後1年以上経過したものについて、-80℃に保存中の肺癌腫瘍部、非癌部肺、それぞれ30サンプルよりRNAの抽出を行った。しかし、30×2サンプルのうち、RNAの変性していないものは約半数であった。(手術摘出より凍結までの時間によりRNAの変性が起こったと考えられる。)現在、MUC1[TCCAATCACAgCACTTCTCCC,AgCCAAggCAATgAgATAgAC]MUC2[CAAgCACAgCACCgATTgCTgAgTT,CACCTggTgCgTAgTAggTgTCgTT]のプライマーを作成し、それぞれRT-PCRを施行したところMUC1は肺腺癌以外にも発現を認めた。また、米国NCIより得た肺癌細胞株cDNA 30種類についてMUC1,MUC2のRT-PCRでの発現について検討中である。
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