研究概要 |
【目的】神経細胞の変性過程において、代謝の変化が、細胞死と関係があるのか再生と関係があるのか明らかに区別することは困難である。しかしながら、再生の指標と代謝の変化との相関を調べることにより、1つの方向性が明らかになる。ミトコンドリア酵素活性と再生の指標蛋白であるsynaptophisineやgrowth-associated protein-43等の蛋白発現との相関を組織上で観察した。 【方法】剖検時、右半球の1部を4%paraformaldehydeで固定した。Alzheimer型痴呆6例、Huntington病2例、ALS5例を用いた。固定脳は、8%sucroseに侵軟させた後、ドライアイスアセトンで急速凍結し、coldtome(Sakura,Japan)で、厚さ10mumのスライドグラス切片を作製した。1部をHE染色、ニッスル染色、渡銀染色を施行し、病変の性状を観察した。その連続切片を用いて、酵素組織化学および、免疫組織化学を同一切片で施行した。酵素組織化学染色は、Wong-Riley,MTT(1979)の報告したCO活性染色を用いた。免疫組織化学染色は1次元抗体に、抗trnsferrin receptor抗体、抗synaptophisine抗体、抗growth-associated protein-43抗体を用いた。発色反応にABC法を用い、発色物質は、CO組織化学染色と異なる物質を用い、CO染色と区別できるようにした。両者の分布を顕微鏡で比較検討し、各々抗体との相関を検討した。【結果】老人班ではCO活性染色性が亢進しており、さらに抗synaptophisine抗体陽性の突起が認められた。ALS大脳皮質運動野では錐体細胞のCO活性染色性は低下しており、さらに抗trnsferrin receptor抗体、抗synaptophisine抗体、抗growth-associated protein-43抗体で染色されなかった。【考察】再生蛋白の発現とミトコンドリア酵素の一つであるCO活性の染色性とは相関している可能性が示唆された。ミトコンドリア酵素の一つであるCO活性およびその他のミトコンドリア酵素活性と神経再生との相関を検討する必要があると考えられた。
|