遺伝性感覚性ニューロパチーは、四肢表在知覚障害と反復性無痛性潰瘍形成を特徴とする原因不明の遺伝性疾患である。本研究では、遺伝性感覚性ニューロパチーII型の一家系において、restriction fragment length polymorphism(PFLP)法を用いて、本疾患の遺伝子座位がNGFR geneと連鎖しているかどうかを調べた。本家系は両親がいとこ婚で、3人兄弟のうち2人に発症している。 患者、家族、および正常controlのリンパ球からDNAを抽出し、XmnlおよびHincllで切断した。これをアガロースゲル電気泳動し、ナイロンフィルターに転写する。アイソトープ標識したNGFRcDNAと反応させ、バンドパターンから、RFLPを観察した。 (1)制限酵素としてXmnlを用いた場合、患者、家族、正常コントロール共に同じバンドが出現し、polymorphismを見いだし得なかった。 (2)制限酵素としてHincllを用いた場合、患者、家族、正常コントロールにおいて、constant alleとして6.6kb、variable alleとして9.6kbおよび4.8kbのバンドが出現した。患者家系内でのvariable alleは、父親(9.6kb) 母親(4.8kb) 長男(発症)(9.6kb) 次男(発症)(9.6kbおよび4.8kb) 三男(健常)(9.6kb)であった。 この結果から、本家系においては疾患遺伝子とp75NGFR遺伝子との間に連鎖関係は有り得ないと判断した。一家系のみで結論を出すことはできないが、NSAN type IIの病因遺伝子としてp75NGFRが関与する可能性は低いと思われた。
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