研究概要 |
1)筋萎縮性側索硬化症(ALS)の脊髄前角細胞においてユビキチン陽性のskein-like inclusion(SLI)が特徴的な所見とされている。今回乳幼児の運動ニューロン疾患であるWerdnig-Hoffmann病およびbasophilic inclusuion(BI)を伴う若年性ALSにおいてその発現の有無を成人型ALSと比較検討した。SLIはWerdnig-Hoffmann病、若年性ALSではみとめられず,成人発症のALSに特徴的な所見であると考えられた。 2)成人発症の運動ニューロン疾患のsubgroupで脊髄前角細胞のユビキチン陽性のSLIの有無を比較検討した。孤発性ALS,孤発性下位運動ニューロン疾患,痴呆を伴う孤発性ALS,長期人工呼吸器管理のALS、およびLewy body-like hyaline inclusionを伴う孤発性ALSでは全例でSLIが認められた。BIを伴う孤発性運動ニューロン疾患ではSLIは確認できず,Bunina小体も認められなかった。成人発症のALSにおいて少なくとも下位運動ニューロンについては同様の変性機序の作用している可能性が考えられる。BIを伴う成人型運動ニューロン疾患では古典型ALSとの相違が示唆され,BIを伴う若年性ALSとの関連について今後さらに検討が必要と考えられた。 3)ALSの脊髄前角のシナブスの変化をpresynaptic vesicle membraneの構成蛋白であるsynaptophysinに対する抗体を用いて免疫組織化学的に検討した。正常コントロールに比べて,ALSの脊髄前角ではsynaptophysinの染色活性が低下しており,前角細胞の減少との相関がみられた。残存ニューロンには正常と同様の染色性が認められた。局所性脳・脊髄病変による二次性錐体路変性の例では正常コントロールと同様の強い染色性がかみられ,ALSの脊髄前角のsynaptophysinの染色性の低下は下位運動ニューロンの減少が主因と考えられた。
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