痴呆と関連づけて、立体視を検討した。 目的:1、立体視は両側頭頂後頭葉が関連する機能と言われている。一方、アルツハイマー型老年痴呆では両側頭頂後頭葉の血流低下が報告されている。立体視の能力の変化が、アルツハイマー型老年痴呆において観察されるかを検討し、症候学的意義を確率する。 2、アルツハイマー病と脳血管性痴呆、良性の物忘れの鑑別は臨床上重要な点であるが、症候学的に鑑別する方法は明確ではない。立体視の能力の変化が、これらを鑑別する一助になるかを検討する。 方法:全体的立体視(global stereopsis)の検査を作成した。これを用い、アルツハイマー型老年痴呆、脳血管性痴呆の各5例で立体視の能力を検討した。物忘れを示す患者4例に本検査を施行し、経過観察とした。局所性立体視に関しても全体的立体視との関連上を検査を行った。 結論:傾向として、アルツハイマー型老年痴呆例では、全体的立体視が困難であった。脳血管性痴呆例は、健常老年群と差はなかった。 考察:症例数が少なく、傾向しかでていないが、本方法は臨床的に容易に施行できる。今後さらに症例数を増加し検討を進めていきたい。また、物忘れを示す群に関しては、長期的な経過観察が重要と考えている。立体視の検査を種々の脳損傷患者に施行するなかで、視床枕の損傷により局所性立体視の障害が引き起こされることを見い出した。こういった観察は、脳と立体視を考察する上に重要な所見である。立体視と視床枕の関連については、雑誌に発表した。
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