研究概要 |
ヒト巨細胞性心筋炎の動物モデルであるラット自己免疫性心筋炎の発症機序、治療法を検討した。また、心筋炎から拡張型心筋症への進展機序を解明するため、実験的自己免疫性心筋炎の慢性期所見を検討した。抗原感作によって心筋炎を発症させたラットの脾細胞とリンパ節細胞を各種マイトジェンの存在下に培養した後、正常同系ラットに静注した。その結果コンカナバリンAで培養したリンパ球(T細胞)で心筋炎をトランスファーすることができ抗体やB細胞では疾患転嫁はできなかった。したがって、実験的自己免疫性心筋炎の発症にはT細胞が重要な役割を担っている(研究発表8)。次に、実験的自己免疫性心筋炎の病巣浸潤細胞の特徴をフローサイトメトリーを用いて検討した。病巣浸潤リンパ球はCD4陽性T細胞が主体であり、alphabetaT細胞受容体を発現していた。また、浸潤T細胞はインターロイキン2受容体やLFA-1を強く発現していた(研究発表4)。実験的自己免疫性心筋炎に対するサイクロスポリン、プレドニゾロン、アスピリンの効果を検討し、サイクロスポリンの心筋炎発症抑制効果が優れていることが示された(研究発表3)。また、既に発症した実験的自己免疫性心筋炎に対してはFK506が治療効果があることが示された(研究発表1)。各種免疫抑制剤の実験的自己免疫性心筋炎に対する予防効果と治療効果についてまとめると、サイクロスポリンとFK506が優れていた(研究発表6)。実験的自己免疫性心筋炎を発症させたラットを4カ月後まで観察した。激しい心筋炎は第6週までに治癒するが、慢性期に心臓は拡大し、組織学的には広範な線維化病変をみとめ、ヒト拡張型心筋症に類似する心病態を呈した(研究発表5)。今後、この実験的自己免疫性心筋炎をさらに解析することによって、(1)巨細胞性心筋炎の発症機序の解明と治療法な開発、(2)心筋炎から拡張型心筋症への進展機序の解明、(3)慢性心筋炎や特発性心筋炎などの心筋炎の病態解析に新たな知見が得られるものと考えられる(研究発表2,7)。
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