1.研究目的および方法 Preconditioningによる再灌流不整脈抑制効果の機序を明かにすることを目的とし、ラット摘出灌流心モデルを用い完全虚血とRapid pacingによる2種類のPreconditioningを作製し検討した。 2.結果:Preconditioningの再灌流不整脈に対する抑制効果 (1)3回の短時間(5分間)完全虚血はそれに続く10分間の完全虚血後の再灌流不整脈に体して抑制効果を認めた。 (2)3回の短時間(5分間)Rapid pacingも同様の再灌流不整脈抑制効果を認め、その効果の程度とPacing Rateの間には正相関が認められた。 (3)解糖系の指標である乳酸及びH^+産生は対照群に比較してPacing群では有意に上昇していた。 3.考案 長時間虚血の前に亢進した解糖系は、心筋保護作用をもつATPの貯蔵を増加させることが知られている。Pacing群においては冠灌流量が保たれその結果代謝産物の洗いだしは行われているにも関わらず、冠灌流液中の乳酸とH^+産生は増加しており虚血前の解糖系亢進によるATP貯蔵の増加と同様の機序により心筋保護並びにそれに伴う再灌流不整脈抑制効果を示した可能性が示唆された。Rapid pacingは冠灌流が保持されている点で完全虚血に比較して安全であり、またPacing Rateの増減により心筋保護作用の程度を変化させえるため臨床面での何らかの寄与が期待される。
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