冠動脈は血管径が数ミリ程度と細く、しかも心拍動に伴い直径の数倍の距離を移動するため、その非侵襲的造影には優れた空間分解能と時間分解能の両者を兼ね備えた撮影法が必要である。本研究では、まず撮影時間が1秒以内まで短縮された市販のMRI装置における高速撮影について、自作の等速度および単振動運動を行うモデルを用い、運動に対する時間分解能の実験的評価を行った。その結果、生理的な左室壁運動速度である約十数cm/以内の運動については、約0.3秒の高速撮影法により運動の様子を描出できることを実験的に示すことができた。 次いで空間分解能に対する評価を行ったが、現有のMRI撮影装置における本撮影法の空間分解能は約3mm程度が限界であり、直径5mm以下の冠動脈の撮影には不足していることが判明した。以上の基礎的検討結果から、現在市販されているMRI撮影装置を用いて冠動脈を撮影するには、心電図同期と高速撮影とを折衷せざるを得ず、約十数秒の撮影で1mmの空間分解を達成した。本法は近年欧米で報告され始めた冠動脈撮影法と類似の方法であるが、これを用いて実際に健常者を対象として非侵襲的冠動脈撮影を行ったところ、右冠動脈の近位から中位部および左冠動脈近位部が容易に描出され、今後は本法を臨床的に応用する予定である。 また、本研究の基礎的検討において得られた0.3秒の高速撮影法による心臓の壁運動評法は、市販MRI装置における初めての心臓リアルタイムMRIと言え、今後MRIによる心機能評価法として応用できる。
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