今回の研究計画に関連して下記に述べる二つのプロジェクトが終了、もしくは現在進行中であり、ここに報告する。 1)今回の研究計画の仮説を提唱するうえでの基礎となる血管内皮細胞内でのウイルス増殖に関する分子生物学的研究が終了し発表された。この結果、以前我々が報告した心筋細胞内でのウイルス増殖と同じウイルス遺伝子が血管内皮細胞でのウイルス増殖にも関与していることが明らかとなり、ウイルス性心筋炎の際にウイルスの心筋細胞への直接障害に加えて、ウイルスにより感染した血管内皮細胞より放出された物質により心筋細胞障害が修飾される可能性に関する実験的な証拠が得られた。 2)今回の研究計画に従い^<51>Crを用いて混合培養系での心筋細胞障害を検討した結果、次の二点が問題となった。トランスウェルの上層部の血管内皮細胞の状態が顕微鏡下で観察できないこと、並びに下層の心筋細胞から放出された^<51>Crが上層の血管内皮細胞に取り込まれることにより上清中の^<51>Cr量が心筋細胞障害を反映しないことである。これらの問題点は、新しく開発された顕微鏡下で観察可能なトランスウェルを用いること、並びに^<51>Crの代わりに上清中のCPK、LDHを測定することにより心筋細胞(CPK、LDH)と血管内皮細胞(LDH)の障害を定量可能となることで解決した。現在この改良点をふまえて研究が進行中である。
|