研究概要 |
糖尿病と高血圧が高頻度に合併することから、インスリン抵抗性あるいは高インスリン血症と心血管系との関連が強く示唆されている。そこでラットに高フルクトース食を与え、血圧、心臓への影響を観察した。 高フルクトース食投与は、血糖には影響を与えなかったが血中インスリンは増加した。また直接法で計測した血圧・心拍数は対象群と差はなかったが、高フルクトース群では左心室重量が増加した。 インスリンはナトリウム貯留作用を有する。そこで、高フルクトース食に加え食塩負荷を行うことにより、ナトリウム貯留の心血管系への影響を検討した。しかしながら、増塩食投与により高フルクトース投与ラットの血圧、心拍数、心重量は変わらなかった。 次に高フルクトース投与による心重量増加の原因を生化学及び組織学的に検討した。高フルクトース投与ラットでは、組織蛋白量は増加したがDNA量は変化なかった。また組織では心筋細胞は肥大傾向を示したが、問質の膠原線維の増加は認められず、左質重量の増加は心筋細胞肥大によるものと考えられた。 最後に,心肥大の原因を検討するため、尿中カテコラミン、血漿アンジオテンシンII濃度を測定した。尿中ノルエピネフリン、エピネフリン濃度はフルクトース投与により変化がなかったが、血漿アンジオテンシンIIは対照群に比べ有意に増加した。そこでアンジオテンシンIIの心肥大への関与を調べる目的で、アンジオテンシンII受容体阻害薬を投与した。阻害薬投与は血中インスリン濃度には影響なかったが、心肥大形成を有意に抑制した。 以上のことから、フルクトース食投与はラットにおいて心肥大を誘導し、その機序として血中レニン・アンジオテンシン系の関与が示唆された。また血行動態、交感神経系、ナトリウム貯留の影響は少ないと考えられた。
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