研究概要 |
本態性高血圧症の発症には複数の遺伝子が関与していると考えられている。当科ではすでにレニン遺伝子の制限酵素断片長多様性(RFLP)と本態性高血圧症との関連を報告している。本研究ではレニン-アンジオテンシン系のコンポーネントのうちアンジオテンシンIIの主たる受容体であるタイプI(AT_1受容体)遺伝子のRFLP、及びアンジオテンシンの変換酵素(ACE)遺伝子の多様性と本態性高血圧症との関連を検討した。 1.AT_1受容体遺伝子のRFLPを検討するために用いたプローブはAT_1遺伝子の塩基配列よりpolymerase chain reaction(PCR)法を用いて合成した。AT_1受容体遺伝子のRFLPの有無を検討するため29種類の制限酵素を用いてスクリーニングを施行した。使用した制限酵素は以下の通りである。(Ava II,BaII,Bg1I,Bg1II,EcoR I,Hae III,Hinf I,Hind III,Kpn I,Mbo I,Pst I,Pvu II,Sac I,Xba I,Apa I,EcoRI,Sma I,BamH I,Msp I,Nae I,Taq I,Dra I,Alu I,Nru I,BssH II,SSpI,Hinc II,Sph I,Xho I)しかしながら今回の検討では、AT_1受容体遺伝子のRFLPは検出不能であった。 2.ACE遺伝子の多様性はACE遺伝子のイントロン16にある挿入(I)/欠失(D)部位の解析をPCR法を用いて検討した。愛媛県下の大企業職員(高血圧群84例、正常血圧群84例)を対象として、ACE遺伝子の多様性(DD,ID,II)は高血圧群と正常血圧群では有意差を認めなかった。ACE遺伝子の多様性と本態性高血圧症との直接的な関連は明らかでないことが示唆された。
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