本態性高血圧発症・維持機構を明らかにすべく、鉱質コルチコイイド過剰による水・ナトリウム貯留型高血圧モデルであるDOCA-saltラットを用いて検討を行い、以下の結果を得た。5週齢のSprague-Dawleyラットに1週間水道水を飲水させた後、DOCA100mg含有pelletを皮下に植え込んだ(DSH)と対照群(Cont)にさらに1%食塩水4週間飲水させ、血圧、尿量(UV)、尿中Na排泄量(UNaV)、尿中カリクレイン排泄量(KAL)、尿中プロスタグラジンE2排泄量(PGE2)、尿中ジギタリス様因子排泄量(EDLF)を測定した。さらに、片腎摘を加えたNx-DSHおよびNx-Contにても同様の検討を行った。ContではUV、UNaVのみ有意に増加したが、DSHでは4週後に血圧は有意に上昇、KALは2週後、UV、UNaV、PGE2、EDLFは1週間より有意に増加し、KAL、PGE2、EDLFと血圧、UV、UNaVの間に正相関を認めた。Nx-DSHの血圧は2週目に著明に上昇、UV、UNaV、PGE2、EDLFは1週間後より有意に増加したが、KALに有意な変動は認められなかった。また、PGE2、EDLFは血圧、UV、UNaVと正相関したがKALにはかかる相関は認められなかった。Nx-Cont群ではUNaVは有意に増加したが他の因子に変動は見られなかった。以上のことから、DSHではKAL、PGE2は亢進し、これらが体液貯留・血圧上昇に防御的に作動し、一方、体液貯留に伴う昇圧系であるEDLFの上昇は血圧上昇に一部関与しているものと考えられた。Nx-DSHではPGE2、EDLFはDSHと同様の役割を果しているものの、代償的なKAL上昇は見られず、これが早期よりの著明な血圧上昇の一因と考えられた。 現在、自然発症高血圧ラットにおけるこれら諸系の役割を検討中である。
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