成犬およびラット再灌流心モデルにおいて、心筋の虚血再灌流障害におけるフリーラジカルの関与を、電子スピン共鳴法(ESR)と心筋の生化学的微細構造学的分析により検討し、さらにsuperoxide dismutase(SOD)、catalase阻害剤(ATZ)の効果についても検討した。 1.血中フリーラジカルのESR signalは虚血10分後でわずかに検出され、再灌流後に徐々に増大し、再灌流5分後に最も明瞭となった。SOD前投与群では再灌流後でもESR signalは検出されなかった。 2.心筋小胞体(SR)のCa‐ATPase活性は、10分単純虚血群では非虚血部と同程度に保たれたが、10分虚血30分再灌流群において非虚血部の60%まで有意に低下した。SOD投与群では30分再灌流後でも80%の低下にとどまった。 3.SR蛋白のSDSゲル電気泳動による分画定量では、ATPase主蛋白は10分単純虚血、10分虚血後再灌流、SOD投与いずれの群においても有意な変化を認めなかった。 4.ATZ投与によりcatalase活性は著明に抑制され、再灌流時の血行動態の悪化、SRのATPase活性の低下が増強され、電気泳動によるSR蛋白の分画定量でも、10分虚血後再灌流群においてATPase主蛋白の有意な崩壊を認めた。 5.虚血再灌流部心筋の微細構造観察では、contraction band necrosisを多く認めた。 以上より虚血再灌流障害におけるフリーラジカル関与が強く示唆された。
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