拡張型心筋症(DCM)は病因はいまだに不明である。本研究では、その病因を明らかにするために、DCM57例の心内膜心筋生検組織像を光顕、電顕的に病理組織学的に分析した。間質単核細胞の、リンパ球の表面マーカーを用いた免疫組織化学的検討も行なった。種々の病変度の心筋変性、心筋肥大、心筋配列異常、間質の線維化、単核細胞浸潤が観察された。不規則斑状の線維化は若年発症群(Y群:45歳未満、n=32)で優位に認められ、一方、血管周囲性の線維化はしばしば高齢発症群(O群:45歳以上、n=25)でみられた(p<0.05)。Myocarditic indexは線維化、心筋大小不同、心筋配列異常、単核細胞浸潤からなるが、Y群(4.5±2.4)ではO群(2.8±1.6)に比べて、有意に高値を示した(p<0.01)。単核細胞の多くはT細胞表面マーカーが陽性で、20.8±18.2%はOPD4陽性であった。間質浸潤細胞のなかでは、HLA-DRが陽性を呈したマクロファージがみられ、免疫応答の関与が推測された。電顕的には筋原線維の粗鬆化と断裂を認め、ミトコンドリアの種々の変性と毛細血管基底膜の多層化がみられた。本研究はDCMの病因を示唆するものであり、特にDCM若年発症群と特発生(ウイルス性)心筋炎の関与が考えられたがPCR法を用いた心筋内ウイルス遺伝子の検索は引き続き行う予定である。本研究は東京慈恵会医科大学誌第108巻第6号775-89に掲載された。
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