研究概要 |
小児部分てんかん(2〜15歳)の患児39例において脳波,SPECT,MRIを施行し,焦点を検索した.8例(20%)に脳腫瘍,脳血管障害など器質的な異常がMRIによって確認され,これらの症例では,SPECTでMRIにおける病変より広い範囲に集積の低下が認められ,器質的異常に伴う広範な大脳機能の低下が示唆された.このうち3例に,てんかん手術前後にWechslarによる知能テスト(WPPSIあるいはWISC-R)によって経過を観察しえた.3例中2例が発作コントロール良好であり,術前IQ69.3±12.7から,術後IQ83.3±14.4と改善がみられた. 一方,31例(80%)においては,MRIにける器質的異常はみとめられなかったが,SPECTで31例中26例に局所的な集積低下が認められ,てんかん焦点を反映していると考えた.これらのうち薬物治療前に9例においてWechslarによる知能テストを施行し,IQ96.7±12.7であった.単剤治療を行い(内訳はCarbamazepine4例,Valproate3例,Phenytoin1例,Zonisamide1例),いずれも発作コントロールは良好である.薬物開始1年後の再検査ではIQ101.9±15.0と改善が認められた. これらの結果は,いまだ少数例であり結論を見いだすのは困難であるが、小児部分てんかんにおいて,大脳の器質的異常を伴う場合は,SPECTで広範囲の集積低下をみとめ,知能テストでは知能障害が認められた.しかし,手術によって発作がコントロールされた場合は,知能障害の改善が認められた.一方,大脳の器質的異常を伴わないてんかんにおいては,治療開始前には,知能障害は明らかではなく,単剤治療開始1年後には改善傾向が認められた.すなわち,小児部分てんかんにおける大脳高次機能の発達は,単剤による薬物治療では影響は少なく,てんかんをもたらす原因および発作のコントロールに依存するものと思われた。
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