Zellweger症候群をはじめとしたペルオキシソーム欠損症は重篤な中枢神経障害を来す予後不良の遺伝性疾患で、我々はその病体解明を目的として、遺伝的相補性解析、CHO変異細胞によるペルオキシソーム形成遺伝子のクローニング、そしてペルオキシソーム欠損モデルマウスの作成を目指している。既に1つの相補性群(F群)についてはその病因遺伝子PAF-1のcDNAクローニングに成功して患者における変異部位も明らかにしており、さらに本研究は以下のように発展している。 1、ペルオキシソーム欠損症の遺伝的相補性群は日米、欧、豪州の患者細胞を集積して検討した結果、10個の相細性群(A-G、2、3、6群)に分類された。 2、F群以外にC、E群でも同じ相補性群に属するCHO変異細胞が分離されており、現在この細胞にラットやヒト肝臓より作成したcDNAライブラリーをトランスフェクションして機能的スク-リングを行っている。 3、PAF-1についてはそのヒトゲノム遺伝子をクローニングし、コーディング領域についてはイントロンが介在していないこと、またFISH法によりヒト8番染色体長腕(8q21.1)に座位する事が明らかになった。 4、現在、マウスのゲノム遺伝子をクローニングしており、さらにジーンターゲッティングによりPAF-1遺伝子を破壊してペリオキシソーム欠損モデルマウスを作成して胎生期より個体レベルで生化学的、病理学的に検討することにより、中枢神経障害をはじめとする本症の病態を解明するとともに、将来は遺伝子導入後の病態の推移を観察し得る遺伝子治療のモデルとしても開発を進めたいと考えている。
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