研究概要 |
(1)前年度の報告のように、stroid sulfatase(STS)遺伝子欠損症の遺伝子欠損範囲の検討では、隣接した遺伝子欠損の存在する症例が一例追加された。症例は、臨床症状としてはSTS欠損に起因する魚鱗癬のみであり、X-linked recessive chondrodysplasia punctata(XRCDP)様の症状や外性器、嗅覚の異常などKallmann症候群の症状は認められなかった。高精度染色体分析法では欠損その他の異常はなかったが、Southern blot法による解析ではpTAK10a(DXS89),pSTS76(STS),M1A(DXS31)をプローブとした場合にシグナルが認められず、DXS89〜DXS31の範囲での遺伝子欠損が考えられた(吉野ら投稿中)。また、Conradi症候群一例とRad症候群一例の遺伝子欠損範囲の検討では明らかな隣接遺伝子の欠損は見つからなかった。現時点では、XRCDP症例との臨床症状と遺伝子欠損範囲の比較およびこれまでの遺伝子地図との検討からSTS遺伝子座近傍の遺伝子座は以下のように考えられる。 cen-DXS143-KAL-DXS89-STS-DXS31-XRCDP-MIC2-(SS)-ter 今後はさらに症例の集積を行うとともに、XRCDP遺伝子座のより近傍に存在する遺伝子断片(Dr.Ballabioに依頼)をプローブとしての詳細な検討を予定している。 (2)polymerase chain reaction法でのSTS遺伝子欠損同定の試みは、数種類のプライマーを作成し、まず正常コントロールで検討してみた。その結果、いくつかのプライマーでは再現性をもってポジティブコントロールが得られたが、男性コントロールではY染色体の一部を認識すると考えられるバンドも認められ、STS欠損症での遺伝子診断のためにはもう少し特異性の高いプライマーでの検索が必要と思われた。
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