平成4年度および平成5年度に診断した耐糖能異常16名および若年発症インスリン非依存型糖尿病(NIDDM)患者30名を対象に末梢血よりDNAを抽出し、遺伝子異常の解析ならびにインスリン分泌能と感受性の検討を行い以下の結果を得た。 1.インスリンレセプター遺伝子の検討 PCR-SSCP法にて異常を検討したが、今回の検討では異常のある患者は認めなかった。 2.ミトコンドリア遺伝子の検討 上記の患者の内、家庭歴に糖尿病を認める患者を対象にミトコンドリア遺伝子のうち、tRNA-Leu(3243)領域の検討を行ったが、異常は見いだせなかった。 3.インスリン遺伝子の検討 糖負荷試験でインスリン/Cペプチドのモル比の異常を認め、インスリンの構造異常が疑われた症例は認めなかった。 4.小児期発症のNIDDMの遺伝子異常の頻度 上記1〜3の結果より、若年発症のNIDDMであっても遺伝子異常が原因となっている症例は少ないと考えられた。 5.小児期発症NIDDMのインスリン分泌能、インスリン感受性の検討 遺伝子異常を認めないNIDDM患者のうち、肥満を認めない患者について糖尿病状態の時期と糖尿病状態を脱し、薬物不要で代謝異常が検査上、認めなくなった時期でのインスリン分泌能、感受性を検討した。食後2時間の血中Cペプチドは糖尿病状態を脱した後は全例ほぼ正常の値を示し、インスリン分泌不全の状態ではないと考えられた。一方、グルコースクランプ法でのインスリン感受性の検討では糖尿病状態を脱した時期では糖尿病状態の時期よりは改善が認められたものの、正常に比べて1/2〜1/3程度の値であった。このことより小児期発症のNIDDMの原因はインスリン感受性の低下によるところが大きいと考えられた。今後はインスリンレセプター後の異常の解析について研究を進めたい。
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