研究概要 |
v-H-ras癌遺伝子をIL-3依存性造血細胞株FDC-P1に導入し樹立したFHR(この細胞株も、IL-3依存性)を用いて、自律増殖能の獲得と腫瘍形成能の獲得について検討した。 FHR細胞株を培養する過程で、IL-3濃度を徐々に下げて成長因子非依存性クローンInd-FHRを樹立した。親株であるFDC-P1とFHR、Ind-FHRそれぞれについて細胞増殖に対するIL-3依存度をmicrowell plate assayによって確認した。その結果、FHRは親株であるFDC-P1に比しIL-3依存度は軽減しているものの依然増殖にIL-3を要求し、抗IL-3モノクローナル抗体存在下では増殖が抑制されたのに対し、Ind-FHRはIL-3非依存性となっており、抗IL-3モノクローナル抗体存在下でも増殖は抑制されなかった。 v-H-ras癌遺伝子を持ちながらIL-3依存性増殖をするFHR、および自律増殖能を獲得したInd-FHR、そして親株のFDC-P1を同系マウスに、10^3から10^8の細胞を接種し、腫瘍の形成を経時的に観察した。その結果、FDC-P1は腫瘍を形成しなかったが、FHRは10^4以上の、Ind-FHRは10^3以上の細胞を接種すると腫瘍を形成した。 FHRを接種しマウスにできた腫瘍をIL-3存在下に培養し細胞株を樹立したところ(T-FHR),この細胞株は依然IL-3依存性であった。 自律増殖能の獲得と腫瘍形成能の獲得が癌化の過程で同時に起こるのか、あるいは、どちらが先なのか、今のところ明らかではないが、今回の造血細胞株にv-H-ras癌遺伝子を導入した研究では自律増殖能の獲得と腫瘍形成能の獲得は独立した事象であることがわかった。
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