本研究は新生児呼吸不全に対して使用される救命方法である膜型人工肺(ECMO)による肺合併症の成因を究明することを主目的とした。この主たる合併症は広範な無気肺である。 実験.1として健常豚におけるECMO運転時の経時的肺機能の変化および左心仕事量について検討した。ECMO運転中の人工呼吸管理はCPAP 5cmH20の肺休止状態とした。ECMOは 80ml/kg/minの灌流量で運転した。48連続運転試験において強制肺活量(FVC)は11%の低下、呼吸抵抗(Rrs)は8%の低下、コンプライアンス(C)は10%の低下を認めた。左心仕事量はECMO運転開始直後より平均10%増加した。肺機能計測値の低下の原因は明らかにできなかったが、胸部レントゲン写真上は無気肺を認めず、広範で致命的にもなり得る無気肺とは異なる病態と考えられた。本結果より膜型人工肺の化学的刺激による炎症は本合併症の成因に関連しないと考えられた。左心仕事量は静脈動脈バイパスによって減じることはなくむしろ増加することが分かった。 そこで広範な無気肺が蓄在する左心機能低下状態と静脈動脈バイパスによる後負荷増加によってもたらされる肺水腫と仮定し実験.2を行った。健常 2頭を対象として、左心機能低下モデルの作成を試みた。全身麻酔下に気管内挿管し開胸した。左房圧左室測定用カテーテルを挿入後、冠動脈左前下降枝を結紮した。健常心拍出量の 50%前後を目的としたが、心臓作動薬を使用しない状態での安定した左心機能低下モデルの作成に難渋した。現在、実験.2の準備段階であり本実験の最終検討は成されていない。今後、改良を加え薬剤によらない安定した左心機能低下モデルが作成できしだい実験を継続する予定である。
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