成犬と仔犬のパーキンジ線維を用い、百日咳毒素(IAP)非投与下と投与下に、低濃度のイソプロテレノールを負荷しアセチルコリンの濃度を段階的に増量し(10^<-9>〜10^<-4>M)、前値に対する電気生理学的変化を検討した。 成犬:IAP非投与群(4例)では拍動数(/分)は前値59±10(平均±標準誤差)に比し、10^<-9>Mから47±10と低下する傾向を示した。action potential duration(APD)は前値369±38msecに対し、10^<-5>Mから489±38msecと有意に延長した。IAP投与群(5例)では拍動数は前値の42±7に比し、10^<-5>Mから38±7と低下する傾向を示した。APDは有意な変化はみられなかった。maximal diastolic potential(MDP)、activation voltage(AV)、overshoot(OS)、第4相立ち上がり速度については両群とも一定の傾向はみられなかった。 仔犬:IAP非投与群(4例)の拍動数は前値50±5に比し、10^<-9>Mで61±5と増加し、10^<-5>Mから47±5と低下する2相性の反応を示した。IAP投与群(8例)の拍動数は前値45±7に比し、増加傾向はみられず、10^<-4>Mから39±7と低下する傾向を示した。APD、MDP、AV、OS、第4相立ち上がり速度は両群とも一定の傾向は認められなかった。 成犬ではイソプロテレノール存在下にアセチルコリンはM_2受容体に結合し、GTP結合蛋白質(G蛋白質)を介して、K^+透過性の亢進とadenylate cyclaseの抑制により、負の変時作用と活動電位の延長を起こすが、IAPはG蛋白質を修飾してアセチルコリンの作用を抑制すると考えられる。仔犬ではM_1受容体も存在するため拍動数は2相性反応を示すといわれている。成犬に比べM_2受容体による負の変時作用と活動電位の延長作用は少なく、IPAによる影響も乏しかったが、これは仔犬ではG蛋白質の発達が未熟なためと思われる。 検体数が少なく統計処理が不十分なため、更に同様の実験を継続する予定である。
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