神経線維腫症1型(NF1)の日本人家系における分子遺伝学的特徴を明らかにすることを目的として、以下の研究を行った。 当科外来にて、従来の基準で神経線維腫症(NF)と診断されていた95例を対象とした。まず、これらの症状を臨床的に再検討して分類し、米国国立保健研究所(NIH)のNF1の診断基準を満たす53例を抽出した。このうち、研究に協力の得られた10家系の患者および家族43人の採血を行い培養細胞株を作成して、培養リンパ球からDNAを調整した。同時に、対照として健康男女各30人から採血、作成した培養細胞からDNAを調整した。 Collinsらの報告したDNAの塩基配列よりエクソン28から33Primerを作成、精製し、患者の遺伝子異常をPCR法により検索したが、健常人との差異はなかった。 次に、NF1遺伝子のプローブとして市販されているP5、B3AをATCCより購入。また、Collinsから提供を受けた5個のプローブのうち、AE25とFB5Dを用いてNF1遺伝子の3′端側に対する検索をサザンブロット法にて行ったが、これにおいても健常人との差異は見られなかった。 今後は、5′端側の残りの3個のプローブについてもサザンブロット法の検索を行い、NF1のcDNA全長を解析すると共に、制限酵素を変えて切断するなどして遺伝子異常の有無を更に調べる予定である。 また、PCR法による塩基置換の検索についてであるが、微小な塩基置換の検出には、塩基の配列差異による構造変化を利用したPCR-SSCP法が有力であるとの報告が近年なされてきた。このため、遺伝子変異のhot pointとされているエクソン31を中心にこの方法で塩基置換の有無をもう一度検索する予定としている。
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