研究概要 |
【対象と方法】5年以上経過観察した小児インスリン依存型糖尿病(IDDM)34名(男/女=12/22,診断時年齢9.0±4.8歳)を、急性発症例17名(男/女=7/10,診断時年齢8.6±3.6歳)と緩徐発症例17名(男/女=5/12,診断時年齢10.8±2.3歳)に分類し、診断から10年間の膵島細胞抗体(ICA)の検出率とICA抗体価の変動について検討した。尚、ICAは血液O型ヒト膵を用いた間接蛍光抗体法により測定し、JDF unitにより定量化して表現した。 【成績】 1.急性発症例と緩徐発症例のICA検出率の経時的変化は以下の図に示すようである。すなわち、診断時のICA陽性率は急性発症例が94%、緩徐発症例が82%であったが、急性発症例では短期間にICAが消失し、緩徐発症例では経時的な陽性率の低下が緩やかであり、3年間以上持続陽性を示す例が急性発症例に比べて有意に多かった(p<0.05)。 ICA抗体価の変化は、急性発症例では診断時には160JDF unit以上の高抗体価を示すが、その後短期間で急速に抗体価が低下、陰性化する症例が多く、緩徐発症例では20-40JDF unitの低抗体価を診断時から比較的長期間持続する症例が多く認められた。 【結論】緩徐発症例では診断時から比較的長期間膵B細胞機能が保持される症例が多いが、このような症例では診断時からICAが低抗体価で持続陽性を示すことが多いことが明らかになった。以上のことから、緩徐発症例では自己免疫による膵B細胞の破壊が急性発症例に比べて緩やかに進行しているものと考えられた。
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