1)肥満の小児から採血し、血小板の細胞内カルシウムを測定した。同時にフォルボールエステルとの結合アッセイを行い、結合係数を酵素力学的に解析した。成人病が完成される以前から小児肥満では細胞内カルシウムは有意に上昇していることを明らかにした。肥満度を表すBody Mass Indexは収縮期血圧とよく相関し、細胞内カルシウムは拡張期血圧と相関を示した。 肥満と高血圧やインスリン非依存性糖尿病は病態的に関係深い。そこで血清インスリンと細胞内カルシウム、および細胞内カルシウムとプロテインキナーゼCの関係を検討した。フォルボールエステルの結合係数では、解離定数・最大結合数は肥満とは有意な関係はなかった。Hillの定数が肥満群で高値の傾向があり、インスリン抵抗性との関係を検討中である。これがインスリン非依存性糖尿病や高血圧が発症する機序解明のいとぐちになると考えている。目下論文として投稿準備中である。 2)成人病の病態下における細胞内情報伝達系の変化を探るために、血漿・尿中の一酸化窒素化合物(NOx)とCyclic GMPを測定検討中である。NOxは血管弛緩作用以外にも多様な働きを示す。血管炎をきたす溶血性尿毒症症候群やアレルギー性紫斑病や各種腎疾患を対象に検討した。ネフローゼ症候群においてNOxが有意に低いことがわかり、1994年第29回日本小児腎臓病学会で発表予定である。
|