腎形成期のCA活性と局在性および間葉細胞の分化と成熟を追跡検討し、さらに新生児の酸塩基調節のメカニズムを研究した。 腎発生中、ネフロンおよびCAの遠心性成熟を認め、3週令で腎形成は完了した。1週令の腎皮質外層では、CA活性を殆ど認めず、明らかなCA活性を有する介在細胞は存在しなかった。しかし、S-およびcomma-shaped body構成細胞はCAを有し、分化と共に、糸球体細胞はCA陰性、近位尿細管細胞はよりCA陽性へ変化した。集合管膨大部の全細胞はCAを有し、よりCA陽性な介在細胞とCA陰性な主細胞に分化した。 腎皮質のホモジネートによるCA活性の測定では、1週令、3週令、成人(各N=4)でそれぞれ、CAII:16.6±1.1 、23.9±0.7^*、30.3±1.3^*、CAIV:2.7±1.3、4.7±0.1^*、6.3±0.2^*(EU/mg protein)であった(v.s1週令 *:p<0.05)。 また、in situ hybridizationでも、組織上、CA活性の場合と同様、顕微鏡弱角でCAII mRNAの発現の遠心性成熟を認めた。 介在細胞に関しては、beta介在細胞の抗原元基であるB63陽性、PNA陽性細胞は新生児期、腎皮質表層に単独で出現したが、H^+ATPase陽性細胞およびalpha介在細胞の抗原元基であるBand3陽性細胞は皮質中層にクスターを形成して出現し、いずれの細胞でも極性を呈していなかった。各細胞は皮質中層から深層に向かって極性を発現し、介在細胞におけるCA発現の時期と一致していた。 以上より、新生児の酸塩基調節の未熟性として、遺伝子レベルでのCAII mRNAの発現の未熟成、組織上のCA発現および局在性の不十分さ、生化学的CA活性低値、細胞の非極性などが原因の一部として示唆された。
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