疣贅状表皮発育異常症(EV)の皮膚癌からは、ヒト乳頭腫ウイルス(HPV)5型、8型が高率に分離されるが、そのE7遺伝子にはトランスホーム活性はないとされてきた。われわれは、最近E7遺伝子が活性型ras遺伝子と協同で初代ラット細胞をトランスホームし、同型ラットに強発癌性を示すことを見いだし報告した。本研究では、EV症病変部組織(HPV5型を含む)からHPV5型E7領域を含むmRNAが検出された。すなはちLCRから読まれ、E6E7領域内でスプライスを受けるmRNAをRT-PCR法によって同定し、塩基配列と生物学的および生化学的機能を解析することにより、患者癌組織でのE7領域の転写活性について検討した。また、HPV8型E7遺伝子と活性型ras遺伝子でトランスホームした細胞が同型ラットに強発癌性を示したことから、8型E7遺伝子のMHCクラスIプロモーター領域の転写調節にあたえる影響をCATアッセイ法を用いて解析した。 その結果、EV症関連のHPV5型、8型では、子宮頚癌から分離される16型、18型、また、尖圭コンジローマなどから分離される6型、11型とも異なったmRNAやE6領域のやや上流から読まれ、スプライスを受けずにE6E7領域の下流まで連続して読まれるmRNAが認められた。 HPV16型では、そのE7領域にMHCクラスIIの発現を抑える性質が報告されているが、HPV8型E7遺伝子では、16型E7遺伝子よりも強いMHCクラスIIの発現を抑制する機能があることが明らかとなった。
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