1.抗C-KIT抗体を用いた免疫組織染色にて、C-KITは表皮内の色素細胞に強く発現するものの真皮内の色素細胞では発現がほとんどみられず、また表皮内においてもmalignant melanoma in situのような基底層から離れて増殖する能力をもつ細胞においてその発現が低下することを見い出した。即ち、色素細胞が通常存在する表皮基底層から離れて異所性増殖する場合、及び悪性化するに従って、C-KITの発現がdown regulationをうけることを明らかにした。また従来より講論されているdysplastic nevusではC-KITの発現がdetectできず、通常のcommon nevusとは異なり悪性化の方向にdeviationしている可能性が考えられ、この染色動態は黒子の診断、予後判定に有用なものであると考えられた。 2.C-KITに相補的な役割をもち、transgenic mouseにて黒色腫形成を誘発するとされるRET及びret遺伝子の発現を抗RET抗体を用いた免疫組織染色及びin situ hybridzationにて検討した結果、正常メラノサイト、母斑、悪性黒色腫のいずれにおいても検出されず、色素細胞の悪性化に伴うC-KIT発現のdown regulationをRETは相補的に作用しないことが明らかとなった。 3.抗bFGF抗体を用いた免疫組織染色では、メラノサイトには発現がみられず、黒色腫細胞ではその発現はヘテロジニアスで、正常メラノサイトと母斑細胞はその増殖因子産生という面では異なる性質をもっており、黒色腫細胞のoriginがメラノサイトあるいは母斑細胞のどちらかであるのを決める一助となることが考えられた。
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