ヒト由来無色素性悪性黒色腫培養細胞株であるSK-MEL-24におけるメラニン産性機構についての検討を行った。14-Cタイロシンを用いたSK-MEL-24の色素産生態はバックグラウン以下であり、1%NP40を用いて作製したSK-MEL-24の細胞抽出液は、濃度依存性にマウス由来の精製チロジナーゼの活性を抑制した。マウス皮下で形成されるSK-MEL-24の腫瘍塊は無色素性で、その細胞抽出液はチロジナーゼ活性を抑制するにもかかわらず、フローサイトメトリーの結果メラニン産生に関する酵素であるチロジナーゼやチロジナーゼ関連蛋白1(TRP1)が陽性であった。またIMMUNOPRECIPITATIONの結果これら酵素の合成も確認された。つぎにSK-MEL-24の細胞抽出液を分子量別に分け、それぞれのチロジナーゼに対する反応をみたところ70kD以上では、強いメラニン産生の促進作用がみられたが、50kD以下特に10から25kDでは非常に強いメラニン産生に対する抑制作用が認められた。このチロジナーゼに対する抑制因子は、同時に行ったヒト由来悪性黒色腫培養細胞株であるKHm-1/4においてもSK-MEL-24と同程度のレベルで認められたが、これを上回るメラニン産生促進因子が存在する事もわかった。以上よりメラニン産生機構はこれら酵素の微妙なバランスによって制御されている事がわかった。 この抑制因子は、分子量50kD以下、65度C1時間の熱処理で編成せず、イオン交換樹脂であるDowex-50WX8にわずかに吸着し、メタノールに可溶性であるがエタノールに不溶性であった。これらの性格をもとにマウス皮下で作製した腫瘍塊よりチロジナーゼに対する抑制因子の精製を行った。腫瘍塊を粉砕、酸性か、熱処理後超遠心、上清を濃縮、エタノール添加、クロロホルム抽出を行い精製効率は12000倍以上となった。
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