研究概要 |
深在性真菌症の病原真菌の多くは菌糸形,胞子形の2形性をもつことが知られている。また,2形性をもつ病原真菌が生体内という真菌にとって厳しい環境の中に侵入した際,菌糸形から胞子形というより抵抗力の強い形態に変化して病原性を発揮することが知られている。そこで我々は,2形性をもつ深在性真菌症の病原真菌の1つであるSporothrik schenckiiを用い,その菌糸形,胞子形に特異的な遺伝子をクローニングし,その遺伝子がどのように菌糸形から胞子形の変換に関わっているかを検討することにした。 【研究方法・結果】 1.2形性をもつ深在性真菌症の病原真菌の1つであるSporothrik schenckiiの菌糸形は25℃,液体サブロ-培地という条件下で,胞子形は35℃,brain heart infusion(BHI)培地という条件下でそれぞれの形態の真菌を増菌培養した。 2.増菌培養した菌糸形,胞子形のそれぞれは,ガラスビーズ,乳鉢等を用いて菌構造を破壊し,それぞれよりmRNAを抽出,それぞれより抽出したmRNAより無細胞蛋白合成系を用いて蛋白を合成し,SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動に流した。その結果,胞子形にはなく菌糸形のみに合成されると考えられる蛋白が検出された。 3.さらに,それぞれの形態の真菌から抽出したmRNAよりcDNAライブラリーを作製し,菌糸形,胞子形より抽出したmRNAをプローブとして,スクリーニングを行なう予定であったが,真菌細胞と動物細胞の差異によるものか,通常の方式によるDNA合成がうまくいかず,現在の所まだcDNAライブラリーの作製まで至っていない。
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