研究概要 |
乾癬皮疹の消長には局所の炎症性サイトカインと接着分子の発現に加え、細胞外マトリクスと浸潤細胞の相互作用が関与していると思われる。これらの発現様式を明らかにする目的で、乾癬患者(n=5)の皮疹部・無疹部皮膚と正常人皮膚(n=5)について、各種接着分子、サイトカインおよび細胞外マトリクスに対するヒトモノクローナル抗体(ICAM-1,ELAM-1,VCAM-1,CD44,CD62/CD11a,CD11b,CD11c,CDw49d/IL-1alpha,IL-1bata,IFNgamma,TNFalpha/フィブロネクチン,ラミニン,コラーゲンIV)を用い、ABA法により免疫組織化学的に検討した。<結果>ICAM-1は皮疹部のみで真皮乳頭上方のケラチノサイト(KC)細胞膜の一部に発現を認めた。血管内皮(EC)ではICAM-1,ELAM-1,VCAM-1,CD62ともに無疹部に比べ皮疹部で強く発現していたが、ICAM-1は無疹部でもよく発現され、VCAM-1は皮疹部でも軽度であった。浸潤単核細胞(MNC)には皮疹部に強いICAM-1,VCAM-1の発現を認めた。CD11a,CD11b,CD11c,CDw49dは無疹部に比べ皮疹部のMNCで有意に強く、CD11a,CD49wdはECにも中等度の発現が認められた。各種サイトカインは、ECでは皮疹部より無疹部でやや強く発現され、KCでは染色上有意差はなかった。CD44は正常人皮膚に比べ皮疹部、無疹部のKC全層の細胞膜、線維芽細胞、MNCに強い発現を認めた。フィブロネクチンは皮疹部の真皮上層の線維芽細胞と全層のECで有意に強い発現を認めた。<考察>皮疹部のみで認めた表皮のICAM-1は乾癬の好中球表皮内浸潤を促し、CD44はLFA-1の機能を促しながら表皮への好中球、リンパ球に浸潤に関与している可能性が考えられた。乾癬無疹部はIL-1,IFNgamma,TNFalphaのサイトカインとともにICAM-1,ELAM-1が持続的に発現されており、皮疹形成の準備状態にあることが確認された。リンパ球遊走にはVCAM-1よりICAM-1の関与が大きく、無疹部で認めたCD49wdはもう1つのリガンドであるフィブロネクチンと反応している可能性が示唆された。
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