腫瘍の初期照射効果を予測することが出来れば局所制御率の向上に大きな貢献をもたらすことができる。そこで高エネルギー燐酸やその代謝産物を定性的、定量的に観察できる^<31>P-MRSを用い腫瘍の初期照射効果の予測を試みた。 1.FM3Aを用いた実験 非照射群では腫瘍の増殖に伴いアデノシン三燐酸、クレアチン燐酸ピークの低下と同時に無機燐の上昇が認められ、測定開始後10日後にはほとんど無機燐のみのピークとなった。これに対し10Gy照射群ではこの現象は有意に遅延した。また照射群では逆に照射後2日頃からアデノシン三燐酸、クレアチン燐酸ピークの上昇が認められた。しかし我々が目的とした照射後早期(数時間後)の変化はとらえることができなかった。分裂死から壊死に至る過程では数時間後ではまだ十分な高エネルギー燐酸代謝の変化は起こっていないのではないかと考えられた。 EL4を用いた実験 そこで放射線高感受性株でアポトーシスを起こしやすいEL4を用い、燐酸代謝と細胞障害とくに間期死との関係を明かにすべく、同様に実験を行った。高エネルギー物質であるアデノシン三燐酸ピークは10Gy照射直後から徐々に低下しはじめ4時間後に最低となり、その後再び上昇しはじめ24時間後には照射前よりも明らかに上昇した。現在4時間後にアデノシン三燐酸ピークが低下する現像に線量との関係があるかどうか、また組織との関係はどうか検討中である。本研究は間期死の機序を解明するのみでなく腫瘍自体の放射線感受性の差を解明する研究と考えている。
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