生体内には多くの因子の相互作用がある。従って、薬剤の骨粗鬆症治療薬としての効果を検索する為にはin vitroではなくin vivoで直接骨内に注入して、その作用機序を知ることが重要である。そこで実験動物(ラット)の大腿骨の骨髄内に薬物を持続注入する方法を確立した。この系を用いて、骨量の維持に不可欠な生理活性物質の一つであると考えられているエストロゲン及び同様の作用を有する可能性のあるテストステロンなどの性ステロイドホルモンのin vivoにおける作用を検討した。エストロゲン、テストステロン、プロジェステロン各々を2週間持続注入し、その後、X線撮影、骨密度定量を行い非脱灰標本にて組織学検討を行い、各々の作用を比較した。エストロゲン、テストステロンの持続注入では注入部位にX線写真上、骨硬化性の反応が認められ、骨密度も増加した。組織学的には骨髄内に多数の小細胞浸潤が認められた。プロジェステロンではコントロールに比して、はっきりした反応を認めなかった。テストステロンも骨形成作用を示したが、反応の程度はエストロゲンと同程度であった。また、エストロゲンとテストステロンの併用群を各々の単独群と比較したが、有意な差はなかった。前年度より検討中のプロスタグランディンE2の骨形成能との比較ではプロスタグランディンE2の方が骨髄内の注入部位周囲に著名な骨形成を認め、エストロゲン等より著名な骨量の増加が認められた。プロスタグランディンE2は細胞内のcAMPの濃度を増加させるとの報告がある為、同じ系を用いて、cAMPを持続注入したが、プロスタグランディンE2でみられたのと同様の反応はみられなかった。これにより、プロスタグランディンE2の骨形成作用は単にcAMPを介する経路ではないことが示唆された。
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