放射線を用いて得られる画像において、画質の良いイメージを得ることは読影による診断能を上げるために不可欠である。体内に放射性同位元素(RI)を投与して検査を行う核医学ではそのRIの分布、臓器・組織集積能をイメージにより調べ、病気の診断を行う。本研究の目的は体内に分布したRIから体外へ放射される線量の少ないgamma線をガンマカメラで検査する際の問題点を明らかにし、それらの解決法を見いだすことであった。 まず、核医学検査で広く使用されているRIである^<99m>TCを用いて簡単な形状のファントム内におけるgamma線の挙動を調べるために、モンテカルロ法によるシミュレーションを熊本大学の大型計算機で行った。その結果、イメージを作るためのgamma線エネルギーウィンドウ内に、gamma線発生地点から真の位置情報をもつ直接線と偽の位置情報をもつ散乱線を分離することができ、この散乱線のエネルギー分布、空間分布の性質を知ることができた。従来のイメージは1つのエネルギーウィンドウで撮像されるが、今回このエネルギーウィンドウを2つに分割し、これらのエネルギーウィンドウにより同時に2つのイメージをデータ収集し、2つのイメージの差分を取り、イメージに含まれる散乱線を推定する方法を開発した。この推定にはシミュレーションで得られた散乱線分布の解析結果から導き出したサブトラクション係数を用いた。当初、人体模擬ファントムを購入し、実験を行う予定であったが入手できなかったために手持ちの簡単なファントムと^<99m>TCを用いてこの方法の有効性をイメージの視覚評価とデジタルイメージの数値による定量評価で確かめた。さらに、実際の^<99m>Tc標識製剤による患者の検査イメージにもこの方法を適用した結果、従来の撮像法よりもさらに診断能力を高めることがわかった。 今後、患者での臨床データを集め、この方法の有用性について検討したい。
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