臨床経験よりえられたステントの最適径は10mmである。雑種成犬を実験対象とした場合、この径のステントを留置することは不可能である。このため、体重、体表面積などを勘案し、径4mmのステントを作成し、留置した。 ステントおよび人工血管の材料はともに高価であるため、本年度は1)ステントのみ、2)ステントをポリエステルで被覆したもの、3)ステントに人工血管を縫つけたもの、の3群を設定し、犬の血管のうち大静脈に留置した。 結果、1)では、ステント表面に約2週間で内皮化がみられ、2週間後の開存もほぼ50%でえられた。しかし、2)3)では、被覆によって血管の内腔が狭小化し、全例で閉塞をきたした。当初の予想では、3)で1)を上回る開存率が期待されたのでかなり意外な結果であった。これは、血管径が狭すぎ、血液の絶対的な流量が不足したためであろうと推論した。今後、さらに人間に近い血管径をもつ動物(豚など)を対象に、径6mm以上のステントでの実験を予定し、その後被覆材料の組織学的検討に入る予定である。
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