研究概要 |
周嗅領皮質は側頭葉てんかんの二次性全般化のモデルであるキンドリング形成に重要な促進的役割を持っていることが示唆されており、また元来興奮性の高い部位でもある。本研究ではキンドリングラットの周嗅領皮質スライスを用い、その興奮性の変化について検討した。SD系雄性ラットを用い、左扁桃核に慢性深部電極を植え込み、週5回のキンドリング刺激(60Hz,1sec)を行なった。キンドリング完成後、最終刺激から24時間ないし72日後に断頭を行ないキンドリング刺激反対側の周嗅領皮質を含む冠状断スライスを作成した。34℃の通常人工脳脊髄液還流下でスライス上の周嗅領皮質で細胞外記録を行ない、自発電位の発生の有無、単発刺激・テタヌス刺激に対する応答、高K^+人工脳脊髄液還流下でのてんかん性活動の状況について観察し、キンドリングをしていないラットからとられた対照スライスと比較検討した。(1)自発電位の発生するスライスの数ははキンドリング群で有意に多かった。(2)単発刺激に対する細胞外応答では両群の波形に差はなかったが、キンドリング様テタヌス刺激ではキンドリング群で数十秒の明瞭な強直間代性の後発射を呈するものが見られたのに対し、対照群では短い(2-3秒)後発射を示したのみであった。(3)高K^+人工脳脊髄液に対する応答では、キンドリング群で自発性の発作活動を示したのに対し、対照群ではより弱い自発活動を示したに過ぎなかった。以上から、キンドリングラットの周嗅領皮質スライスでは、通常のシナプス伝達には著明な変化は生じないが、けいれん誘発性の操作に対して有意に強い応答を呈することが示され、キンドリング形成に重要と考えられている同部位のキンドリングに関連したけいれん準備状態を反映していると考えられた。
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