研究概要 |
感情病(うつ病)における血小板セロトニン_2受容体(5-HT_2受容体)の生物学的マーカーとしての有用性について検討した。5ml程度の少量の血液サンプルで5-HT_2受容体の解析ができる新しい方法として、血小板ペレットを用いたレセプターオートラジオグラフィー法による解析法を確立し(薬物・精神・行動 vol.12,p392,1992)、本法を用いて、予め書面により研究への協力の同意の得られた未治療あるいは2週間以上服薬していない大うつ病患者(DSM-III-R診断、ICD-10診断)と、正常対照者の血小板5-HT_2受容体の解析を行った。5-HT_2受容体結合特性は、Scatchard解析によりKd値、Bmax値を求め、有意差検定は関連のない2郡間のt検定を用いた。Kd値は、患者群、対照群においてそれぞれ0.89±0.12nM、0.82±0.05nMであり、有意差を認めなかった。Bmax値はそれぞれ5.84±0.83fmol/mg,3.22±0.34fmol/mgであり、患者群において有意な増加が認められた。 以上のように、うつ病における血小板5-HT_2受容体の最大結合数の増加が認められ、血小板5-HT_2受容体の生物学的マーカーとしての有用性が示唆された。また、これまで指摘されてきた中枢5-HT_2受容体の機能亢進を反映している可能性も示唆された。現在、本法の利点を活かして、治療開始後1周目、2週目、4週目、寛解時に血小板5-HT_2受容体の解析および臨床症状の評価を行っており、治療反応性と同受容体数の関係について検討している。更に、5-HT再取り込み阻害作用の強い抗うつ薬、ノルエピネフリン再取り込み阻害作用の強い抗うつ薬、炭酸リチウム、電気けいれん療法等治療薬治療法の違いによる血小板5-HT_2受容体への影響について調べ、治療上の生物学的マーカーとしての有用性について検討したい。なお、今回の結果については、第19国際神経精神薬理学会議(Washington,D.C.,1994年6月)にて報告予定である。
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