先の発表で我々は、コカインが麻酔したウサギにおいてアセチルコリン作動性機構を介する覚醒作用(麻酔時間の短縮)を及ぼすことを報告し、その行動学上の覚醒がドーパミンD1レセプター措抗薬で遮断され、D2レセプター措抗薬では遮断されなかった事を示した。今回の研究では、ウサギにおいてコカインが誘発した脳波覚醒(omicron activity)にドーパミンD1レセプター措抗薬とD2レセプター措抗薬がどのようにくかを研究し、前の結果と合わせ、コカインの特性を検討した。方法として、ウレタンで麻酔したウサギにコカインを静脈投与して海馬にomicron波を誘発する。ウサギの場合はラットと違いtheta波の特続が短いので、前処置として、コカイン投与前にD1レセプター措抗薬としてSCH23390を、D2レセプター措抗薬としてラクロプライドを投与し実験を行なった。脳波はコンピュータに記録し、その誘発されたomicron波の1分間の数を計算し統計処理した。結果として、脳波におけるコカインの覚醒作用はD1レセプター措抗薬により遮断され、D2レセプター措抗薬では遮断されなかった。それに加えD2レセプター措抗薬の高用量ではかえってコカインの作用を増強した。先の実験と併せて考察をする。ウサギにおいて行動学上及び脳波学上の双方で、コカインのアセチルコリンを介する覚醒作用はD1レセプター措抗薬にて遮断され、D2レセプター措抗薬では遮断されなかった。この事はコカインの覚醒作用がドーパミンサブタイプの内のD1レセプターを介したものであると考えられる。また高容量のD2レセプター措抗薬については、それが前シナプスのオートレセプターまでも抑制しドーパミンの放出量を抑制できず、神経間隙のドーパミンの量が増加しコカインの作用を増強させたものと考えられた。 冬場のウサギを使用した脳波学上の実験で、ドーパミンの感受性が季節により変化する為と考えられる夏場のD1レセプター措抗薬とD2レセプター措抗薬の作用の結果と反対の傾向が認められたが、確信には至っておらず現在実験は進行中である。
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